モバイル技術

電力制限下でも性能を発揮するARMの新CPUコア Cortex-A73 とは

日本で話題のHUAWEI Mate9 ですが、採用されているHisiliconのSoCであるKirin960には、新GPUだけでなく、新しいCPUコアであるCortex-A73が用いられています。

このCortex-A73は、今年2016年春にARMが、新しいV8-AアーキテクチャCPUコアのIPとして発表したものです。
世界各地に分散するARMの設計センターのうち、これまでのA72はアメリカのオースティンで開発されたものに対し、A73はフランスのソフィアのセンターが担当したものです。

Cortex-A73の特徴は、命令デコードの帯域がA72の3から2へと縮小されたことです。
帯域幅が広いほどより同時に処理できる命令数が増える可能性があり、高性能なチップとなるので、一見、A73での変更は性能としては不利になります。
しかし、帯域が縮小されたことでCPUのダイサイズが同クラスでは最小となり、さらにモバイル向けにマイクロアーキテクチャーの再設計を行ったことで、より高度な性能を引き出しています。

またスマートフォンのようなモバイル用途では常に電力の問題がのしかかります。
低い電力が供給される環境下ではCortex-A72はピーク時はA73と遜色はない、あるいはそれを凌いだとしても、時間の経過と共にパフォーマンスが低下してしまいます。
しかしモバイル向けを想定しているCortex-A73では制限された電力でも長時間安定して動作をすることが可能となっています。

ARMの資料より。750mwのパフォーマンス

さらにサイズが小さくなり省電力性能がアップしたことで、コア数の増加とより高性能なGPUの搭載がしやすくなるというメリットもあります。

常に安定した電力が供給され、スペースもじゅうぶんに確保できるサーバーのような据え置き型には、Cortex-A72の方が高い性能を発揮する可能性があります。
しかしモバイル用途では電力とスペースの制限がきわめて重要視される用途であり、Cortex-A73はそこでこそもっとも性能を発揮するCPUとなります。

今後、MediaTekのHelioX30でもCortex-A73が採用される予定となっています。
Kirin960では、製造プロセスが16nmでクロックが2.4GHzとなっていましたが、HelioX30では10nmで2.8GHzとなります。
すっかり安物の代名詞となってしまったMediaTekは、新コアの採用で汚名返上となるのでしょうか。

HisiliconやMediaTek、そしてAPPLEは、台湾のTSMCが製造を請け負っています。
そのため次期Kirinも10nmへと移行することがほぼ確実視されています。

ARMが発表しているA73の性能は、資料では10nmで製造されたコアですので、本当の実力がわかるのはこれからなのでしょう。
AndroidスマホのSoCの処理能力はQUALCOMM一強となっており、これによりその勢力図がどうなるのか気になるところです。

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